外伝 2
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外伝 2

嫉 妬

 '97年2月10日(月)晴れのち雨

 小鳥の鳴き声で目が覚めた。薄いカーテンからは桁はずれの太陽光線が漏れてくる。そして懐かしい空気。そうか!ジンバブエに帰って来たんだった。「まだ6時だよ」と行ってEWEがシャワーに行った。私はEWE様のコーヒーを作るべく台所に行くと、エマの愛犬たちがクンクン!鳴いている。勝手口を開けると、彼女らは裏庭へ駆け出して行った。

 8時前になるとコックさんがやってきた。何か作って!と頼むだけで、イングリッシュ・ブレックファーストが食卓に並んだ。出されたオレンジジュースを飲んでいると、カリカリのベーコンにフライドトマト、目玉焼きにトースト。あ〜美味しかったとナプキンで口を拭いていると、紅茶を持ってきてくれた。すごすぎる!そこに眠い目をこすってエマが現れた。

  今日のエマは忙しいというので、車を借りた。EWEの助手席に座るのは久しぶりで、二人でこうやってハラレの街を走っていると、ずっとここで暮らしていたようにさえ思える。EWEの仕事の任期が切れて日本に帰ったのは、実は私たちのクローンで....そうだったら私はどんなに幸せか!「バカ!」と隣から声が聞こえると、ちょうどEWEの元職場に着いた。

 2年と1カ月、ジンバブエの人々と、延べ160名の青年海外協力隊員のために働いてきた職場だ。玄関のガラスドアまで来ると、中で受付嬢のフェースが大きく手を振っている。ドアを開け、走ってきたフェースと抱き合おうとした時、左側から運転手のサクイザさんが現れた。私の方がサクイザさんに近かったので、彼と堅い握手をかわした後、フェースと抱き合った。彼女は22歳のジンバブエ人。毎日のように花束を持った男たち(複数)が、仕事中に彼女に会いに来ていたが、もうすぐ未婚の母になるらしい...。 奥に入ると、元同僚の伊東調整員の懐かしい顔。しかし、EWEの席には渡辺調整員が座っていて、新所長や新職員も着任してだいぶたっている。時の流れを感じずにはいられない。やっぱり私たちにはクローンなどいなかった、とセンチなっていた時、むこうで手を振っている人がいた。秘書のムノニャラさんとクラークのマンディベイだった。家を見つけてくれたのも、あのガーデン・ボーイのギャリーくんを我が家に連れてきてくれたのも、ムノニャラさんだった。ブランデーが大好きなご主人も巻き込んでの楽しいお付き合いだった。

 お昼は、中華レストラン”マンダリン”を訪れた。週に2回は食べに来ていて、我が家の第2の台所と呼んでいた所だ。オーナーは経営を甥に任せ、レストランの内装もウエイトレスも変わっていたが、二人のボーイと味は変わっていなかった。ボーイは頼んでいないのに、醤油を持ってきてくれた。私たちが、春巻きには醤油しかつけないことを覚えていてくれたのだ。いつもはいないオーナーも現れて、ゆっくりお話もできた。 帰ると、私はエマにこれらのことを話した。そして、話しながら考えた。嫌なこともいろいろあったジンバブエでの2年と1か月。でも、あのころに戻れないことがわかっていても、戻りたいと願った私。あの人々の住むこの街で、あの人々の友人でいたかった。過去の私に嫉妬した一日だった。

 

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