ジンバブエ分家頁 ハラレのマダム日記



 

その38…落馬 `95年10月16日(火)


今日、私は落馬してしまった。あの瞬間のことがスローモーションのようによみがえる。 
今日は、私よりもずっと初心者の人が数人来ていて、いつもの馬は彼らに使わせてやって欲しいと先生は言った。私は先生に認められたような気がして、とても嬉しかった。私が今日乗った馬は、普段はあまり見ない馬で、人を乗せることがあまり慣れていないようだった。鞭をふるっても、私の言うことを聞いてくれない。先生が鞭をふるってやっと動き出す感じで、レッスンは始まった。

 砂場の練習場を何度も何度も走り、私はやっとその馬に慣れてきた、そう思った瞬間のことだった。馬の走るスピードが少しずつドンドン上がってきて、先生の目が光った気がした。先生は馬の手綱をもっと短く持ち直せと叫んだ。しかし、持ち直している間にふるい落とされそうで、私は“No!”と叫んだ。そして、とうとう今まで走ったこともないようなスピードに達した時、先生が馬の前に両手を広げて立ちはだかり、馬を止めようとしてくれた。しかし、馬は先生をうまく避けて走り続ける。「先生でも止められなかった」そう思った時、もうすぐ私は絶対ふるい落とされると思った。私は急に怖くなり、馬のたてがみにしがみついた。

 その瞬間からスローモーションが始まった。急に馬が止まり、私の体が馬から離れた。練習場の隣に、学校職員の家が建っているのだが、職員の奥さんたちが家の前で洗濯物を乾していた。彼女たちが練習場の馬の異変に気づき、私が頭から落ちていく姿に驚き、「キャ〜!」と大きな声で叫んでいる。私はその「キャ〜!」を聞きながら、私のことを心配してくれている、となぜか冷静に聞いていた。その彼女たちの姿が天に見えたかと思ったら、頭から砂場に着いた。馬のひづめが目の前に見えて、その向こうから、先生が走ってくるのが見えた。

私は起き上がり、先生に思わず“Sorry!”と言ってしまった。先生が今まで熱心に教えてくれたのに、その期待を裏切ってしまったような気がしたからだろう。先生は痛いところがないかと何度も何度も聞いた。私は半べそか来ながら首を横に振り続けた。先生はもう一度馬に乗れるかと私に聞いた。私はうなずいて、また馬にまたがった。

 怖がってはいけないと自分に言い聞かせながら、練習場をまた走り続けた。だが、へっぴり腰の姿だったと自分でも思える。先生はいつもより少し早くレッスンを終わらせ、私にこういった。僕は今まで20回落馬したことあるよ、と少し自慢げに笑ってみせた。

 EWEはその日から私が乗馬に行くことを許してくれなかった。私の右足の青あざを見ながら、「これだけでよかった」と呟いた。

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